ジェネシスを聴く Pt. 1

マイ10大プログレ紹介シリーズ 第2弾

ジェネシスはドラマティックで大仰なシアトリカル・ロックのスタイルで人気を博した。

1967年に結成され、当時のメンバーはPeter Gabrielピーター・ガブリエル)、Anthony Phillips(アンソニー・フィリップス)、Tony Banks(トニー・バンクス)、Mike Rutherford(マイク・ラザフォード)、Chris Steward(クリス・スチュワート)の5人だった。

アートへ

1968年にデビューアルバムのレコーディングが行われた際にドラマーがJohn Silver(ジョン・シルバー)に交代。1969年に『From Genesis to Revelation』(創世記)でデビューするが、このアルバムはプログレとは全く似つかわない作品で、サイケデリック・ポップやフォーク・ロックに近いサウンドだった。この路線を目指したのはプロデューサーに気に入られようとしたからであり、結果的にアルバムはいい評価を得ることができなかった。

これに反省したメンバーはアート・ロックを指向し、アルバム作りに力を入れていく。1970年になるとシルバーが脱退し、ドラマーをJohn Mayhew(ジョン・メイヒュー)に変えて『Trespass』(侵入)をリリース。より大作志向になり、プログレッシヴ・ロックとしてのアプローチがなされた。一般的に名盤として名を挙げられることは少ないが、荒削りながらも自分たちの方向性を決定づけた非常に重要な作品。佳曲が多い中でもとりわけ大きな存在感を放っているのが「The Knife」。やや攻撃的で猛々しいサウンドだが、曲全体に張り詰めている緊張感が非常に鋭利に突き刺さってくる。

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The Knife

The Knife

フィリップスの代わりにSteve Hackett(スティーヴ・ハケット)、メイヒューの代わりにPhil Collinsフィル・コリンズ)が加入し、バンドのサウンドがさらにプログレとして発展することになる。
1971年の『Nursery Cryme』(怪奇骨董音楽箱)では彼らの音楽性が確立され、そのミュージカルっぽさ=演劇性が彼らの持ち味となる。メロディアスという意味ではYesとの共通点もあるが、どうしてもジェネシス独特の表現方法に注意がいってしまい、根幹にある叙情的なシンフォサウンドが正しく評価されないきらいがあるのも事実。「The Musical Box」(怪奇のオルゴール)は激しさと静けさの抑揚がはっきりした曲で、彼らの代表曲の1つに数えられる。それにしても人間の頭部でクリケットをするというジャケットの恐ろしさも特徴の1つだが、「The Musical Box」の歌詞にも注目。

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The Musical Box

The Musical Box

続く1972年には名盤の誉れ高い『Foxtrot』をリリース。メロトロンの音色が荘厳な「Watcher of the Skies」をはじめ、ジェネシスらしい静動のアクセントが効いた曲が多く収録される。「Can-Utility and the Coastliners」中盤に出てくるアンサンブルはジェネシスに限らずプログレッシヴ・ロックの醍醐味であるし、7部構成で23分を超える大作「Supper's Lady」は彼ららしい劇的で整合性のある名曲。本作のライブではガブリエルが赤いきつねの面を被って歌うという演出があった。

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Foxtrot

Foxtrot

『Trespass』以降着実にステップアップを図ってきたが、1973年の『Selling England by the Pound』(月影の騎士)で1つの到達点に至った。これまでの作品よりもメロディアスでメロウな雰囲気が色濃く出ており、サウンドに温かみがある。もちろんこれまで同様荒々しく聴き手を煽る箇所も存在する。シングルカットされてヒットした「I Know What I Like (In Your Wardrobe)」や、名曲と名高い「Firth of Fifth」と「The Cinema Show」ももちろん良いのだが、これまでの代表曲と同系統の「Dancing with the Moonlit Knight」もオススメ。

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全盛期

星の王子さまを題材にしたコンセプトアルバムが提案されたが、ガブリエルがこれを却下。かわりに独自に難解な物語を構築し、アルバムとして作り上げられたのが『The Lamb Lies Down on Broadway』(眩惑のブロードウェイ)。主人公の少年が精神的旅行をし、不思議な生物たちと出逢うというもの。本作を最高傑作と呼ぶファンも多く、プログレの難解さが一段と色濃くなった2枚組の大作。冒頭のタイトル曲を聴く限り、それまでの楽曲の中でも飛び抜けてポップであり、何回な展開になるとは予想もつかない。「In the Cage」のようにこれまでのジェネシスらしいシアトリカルな曲もあれば、「Counting Out Time」のようにポップな曲もある。ラストの「It」はずば抜けてリズミカルなギターワークが印象的。本作のツアー後、ガブリエルが脱退した。

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ガブリエルの代わりにコリンズがヴォーカルを執ることになり制作され、1976年にリリースされたのが『A Trick of the Tail』。そのかわりにBill Brufordがサポート・ドラマーとして参加。これまでのシアトリカルな流れの一身に担っていたガブリエルが脱退したものの、抑揚とダイナミズムを持った「Dance on a Volcano」や、フォーク寄りの「Entangled」のように本作に流れる空気は完全にこれまでのジェネシスと同一のもの。後のポップ路線にも通じるタイトル曲をはじめ、80年台に流行するネオ・プログレにも近い雰囲気も感じ取ることができる。

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さらに同年、同じメンバーで制作された『Wind & Wuthering』(静寂の嵐)は、そのタイトルからも分かる通り英国文学の影響を感じ取れる。「Eleventh Earl of Mar」では従来のファンタジックさやダイナミックな雰囲気を感じつつも、ポップさにも耳をひかれる。ピアノ主体の「One for the Vine」のメロディアスさ、シングルカットされた「Your Own Special Way」のナイーヴな美しさなど、聞き所が満載。「Unquiet Slumbers for the Sleepers...」~「...In That Quiet Earth」の流れには、本作のテーマでもある小説「Wuthering Heights」の一説が取り入れられるなどしている。本作を最後にハケットが脱退し、以降はラザフォードがギターも兼任し、3人体制で活動していくことになる。

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