キング・クリムゾンを聴く Pt. 1

マイ10大プログレ紹介シリーズ 第4弾

King Crimsonは3大プログレバンドで唯一、初期からプログレを追求しているバンド。ギタリストのRobert Fripp(ロバート・フリップ)を中心に活動しており、結成時から現在まで在籍する唯一のメンバーである。

Michael Giles(マイケル・ジャイルズ)とPeter Giles(ピーター・ジャイルズ)、そしてフリップが結成していたGiles, Giles & Frippに、Ian MacDonald(イアン・マクドナルド)、Pete Sinfield(ピート・シンフィールド)、Judy Dyble(ジュディ・ダイブル)が加わる形でKing Crimsonの雛形が完成した。しかしすぐにダイブルが去り、Greg Lakeグレッグ・レイク)が参加。さらにピーター・ジャイルズも脱退し、残った5人でKing Crimsonとなった。

プログレの確立

1969年のデビューアルバム『In the Court of the Crimson King』(クリムゾン・キングの宮殿)は、プログレッシヴ・ロックというジャンルを世間に知らしめた記念碑的作品であると同時に、その極初期の名盤として知られる。この頃はフリップよりもマクドナルドがサウンドの鍵を握っており、メロトロンやサックスの導入などで大きな貢献をした。「21st Century Schizoid Man」(21世紀のスキッツォイド・マン)では、プログレ・メタルの原型とも言えるような硬質でメタリックなギターリフが聴ける。その鬼気迫るサウンドと打って変わって、「I Talk to the Wind」(風に語りて)以降は浮遊感漂うファンタジックな曲が続く。ラストはドラマティックな展開を持つタイトル曲で、この曲からバンド名がとられた。

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デビュー作のリリース後、マクドナルドとマイケル・ジャイルズが脱退。レイクもヴォーカル以外のレコーディングには参加せず、ジャイルズ兄弟やその他のゲストミュージシャンが参加する形で『In the Wake of Poseidon』(ポセイドンのめざめ)が制作された。本来"wake"は航跡を意味する名詞であり、誤ってつけられた邦題であることは有名な話。前作のあまりの偉大さに後塵を拝しているにすぎず、本作の出来は決して悪いものではない。日本ではタイトル曲がCMで用いられた。

続く『Lizard』も、同様にゲストミュージシャンを迎えての制作となった。これまでよりも一層ジャズエッセンスを強め、前衛的な挑戦の形が見え隠れするのが面白い。4部構成の組曲となっているタイトル曲では、その第1部「Prince Rupert Awakes」(ルーパート王子のめざめ)にJon Andersonがゲスト参加。美しいメロディラインに沿って、アンダーソンお得意のコーラスワークが楽しめる。第2部以降の構成も美しく、長尺ながら思わず聞き入ってしまう。

Lizard

Lizard

1971年の時点で正式メンバーであったのは、フリップ、シンフィールド、Mel Collins(メル・コリンズ)の3名であった。Ian Wallace(イアン・ウォーレス)とBoz Burrell(ボズ・バレル)を加えて発表したのが『Islands』。ジャジーな要素は残しつつも、前作よりもクラシック音楽に接近したサウンド。とはいえフリージャズのような即興演奏が顔を見せる部分も多くなってきている。これまでは比較的狂気的なサウンドを見せてきたが、「Prelude: Song of the Gulls」(プレリュード:かもめの歌)やタイトル曲のように穏やかでメロディアスな曲の比率も増えてきている。本作をリリース後、フリップとの仲が険悪になっていたシンフィールドが脱退した。その後ツアーを終えると、バンドは一旦解散することになる。

ハード

1972年。YesからBill Bruford(ビル・ブルフォード)が移籍、またフリップの友人であったJohn Wetton(ジョン・ウェットン)、その他Jamie Muir(ジェイミー・ミューア)とDavid Cross(デヴィッド・クロス)が集結し再結成。即興演奏を軸とした『Larks' Tongues in Aspic』(太陽と戦慄)が完成。いずれの曲も寒々しさをまとっており、高度なテクニックによって築かれた実験的サウンドは、バンドの高い意欲を示した。冒頭とラストに分けて収録されたタイトル曲はその最たるものであるが、個人的には「Larks' Tongues in Aspic, Part 2」(太陽と戦慄パート2)のソリッドなリフが非常に好みだ。

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ミューアが脱退し4人編成で制作された『Starless and Bible Black』(暗黒の世界)には、スタジオレコーディングとライブレコーディングが収録されている。前作よりもさらに表現の幅が拡張されたように感じられ、前作で基盤を築いた構想を発展させ、完成形である次作へと繋がる重要な立ち位置の作品といえる。「The Great Deceiver」(偉大なる詐欺師)では非常にインパクトの強いフレーズが多用され、一度聴くと頭から離れない。次第にハードになっていく「Lament」(人々の嘆き)も強い印象を残していく。この2曲以外はライブ録音になっていて、より直接的なエモーションと、緊張感から来る空恐ろしさがアクセントになっている。

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The Great Deceiver

The Great Deceiver

前作のツアー後クロスが脱退。3人になったが元メンバーたちの助けを借りつつ完成されたのが、傑作中の傑作アルバム『Red』。リリース直前にバンドの解散が宣言されたが、アルバム自体は予定通りに発売された。冒頭に収録されたタイトル曲は、これまでの楽曲とは大きく異なり歪んだギターが前面に躍り出た曲。この曲を聴くと、プログレッシヴ・メタルの原型は1974年の時点で完成していたと思えるほど。「Fallen Angel」(堕落天使)ではキング・クリムゾンらしいジャズ要素を感じつつも、「Red」同様に硬質なギターが聴ける。「One More Red Nightmare」(再び赤い悪夢)も非常に耳に残るフレーズが飛び出し、やはりメタリックなギターが支配している。「Providence」(神の導き)は前3曲よりは落ち着いた印象だが、内包する妖しさと緊張感がひしひしと感じられる。ラストの「Starless」はメリハリの効いた展開で、やはりメインフレーズの耳残りが良い。ハイポジションのギターが奏でられるパートは、よく聴いてみると8分の13拍子という変態的なリズム。

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