ピンク・フロイドを聴く Pt. 2

全盛期 2

『Wish You Were Here』以降はウォーターズがバンドを主導してく形になり、サウンドもよりシンプルなロックに近づいていく。1977年の『Animals』はビジネスマンを犬、資本家を豚、労働者を羊と喩えて社会批判するコンセプト。それぞれ「Dogs」「Pigs (Three Different Ones)」「Sheep」という3つの大作として収録されている。

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発売後のツアーでの事件をきっかけにウォーターズは次なる作品の制作に没頭。その結果として生み出されたのが1979年の『The Wall』であり、2枚組からなる超大作となった。このレコーディング中にライトが解雇されたが、ツアーにはサポートとして参加。リリース当時はパンク・ロックが流行を見せていた頃であり、プログレはもはや古いものとして若者から嫌厭されていた。しかし本作は以前と変わらぬ大ヒットを見せ、バンドの持つパワーを見せつけた。その結果として現在では、世界で最も売れた2枚組アルバムとして知られている。本作からカットされた「Another Brick in the Wall (Part II)」もヒット。
またツアーではステージと観客の間に徐々に壁が構築されていくというパフォーマンスがなされた。その大規模なパフォーマンスのせいもあってか、大勢の観客を動員しつつもツアー自体は赤字となった。

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ますますウォーターズの独裁化が進み、1983年の『The Final Cut』は彼のソロアルバムといわれることもある。非常に個人的な内容であり、戦争に対するメッセージ性が非常に強い。その重苦しさゆえに評価が分かれるが、「When the Tigers Broke Free」や「The Hero's Return」、「Not Now John」のような佳曲も収録されている。

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翌年はギルモアとウォーターズの両者がソロアルバムをリリースするがセールスは振るわず、バンド内でも不和が続いた。結果として1985年にウォーターズが脱退する形でバンドの解散を目指したが、ギルモアとメイスンはバンドの存続を決定した。

ギルモア期

バンドの存続に対してウォーターズが激怒し訴訟に発展するが、バンド側がいくつかの条件を飲む形で和解。1987年には『A Momentary Lapse of Reason』(鬱)をリリース。サウンドは全盛期のような古典的プログレッシヴ・ロックからは離れ、時代に即した音楽性との折衷となっている。あまり芳しい評価を受けていないが、「Learning to Fly」(幻の翼)を始め名曲も多い。

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その後しばらくは活動がなかったが、1993年からレコーディングが再開。ライトがメンバーに復帰し、全盛期の頃のような奥深いコンセプトアルバムが志向された。そして1994年に『The Division Bell』(対)がリリース、世界中でヒットとなった。「Marooned」(孤立)はグラミー賞でベスト・ロック・インストゥルメンタル賞を受賞、それ以外にも名曲「High Hopes」(運命の鐘)を収録。

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High Hopes

High Hopes

終焉

2001年、ウォーターズを含むメンバー4人で選曲した『Echoes -The Best of Pink Floyd』(啓示)がリリース。これまでも何枚か編集盤は発売されてきたが、きちんとした形でのオールタイムベストはこれが初めて。

また2005年に行われたチャリティイベントで、4人による復活ライブが行われた。またロックの殿堂入りも果たした。このまま活動が活発になるかと思われた矢先、2006年には元メンバーであるシドが、2008年にはライトが死去。2011年からは世界的にリリース・キャンペーンが行なわれ、リマスター盤やベストアルバムがリリースされた。

そして2014年にライトの追悼盤として『The Endless River』(永遠)がリリース。もともと2枚組構想だった『The Division Bell』に収録されなかった残りの楽曲で構成され、ピンク・フロイドとしてのラストアルバムであると明言されたうえで発売された。個人的には「Anisina」(追慕~遥かなる想い)の感動的な美しいメロディに心を打たれた。神秘的なジャケットの雰囲気も相まって、バンドの最期としては至高とも言える作品になった。

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Side 2, pt. 4: Anisina

Side 2, pt. 4: Anisina

こうしてピンク・フロイドは、その約50年に渡る活動に幕を閉じた。